Q.遺伝的疾患と検査
遺伝的疾患と検査ついて、質問をいただきます。
改めて、解りやすい説明が出来ればと思いますし、一繁殖者として、科学的な正しい話をする必要があると思っていますが、とりあえず、こちらで説明します。
まず、遺伝的疾患というのは、感染症とはその仕組みが違います。
どうも感染症のように、安易な解釈をされている方が多いように思いますので、JAHD設立以来、多くなってきたCHD(股関節形成不全)の検査を例に、説明します。
繁殖に用いようとしている犬のCHDの検査をし、その結果、その犬にはCHDの兆候が見られなかったからといって、その犬での繁殖、あるいは、その犬の系統が安心だと言ってしまうとすれば、あまりにも安直です。もしそう言うとすれば、まるで何かの感染症と同じような仕組みだと、誤った解釈をしていると思います。
CHDのような遺伝的疾患の仕組みというのは、母子感染やその他の感染症のように、親が大丈夫なら子も平気というような単純なものではなく、その検査というのも、あくまでもその犬に限定した、その犬の関節の状態がどの程度かという評価なのであって、DNAの遺伝子レベルの検査ではありませんので、子孫や血縁の犬達の健全性を示すものではないのです。
また、血統書に記載されているのは、直系の先祖だけですが、犬は一胎同時に複数生まれてきますので、各直系の先祖には、血統書に記載されていない同胎犬達がいます。直系の先祖と近縁の数頭の情報を把握していたとしても、先祖の同胎犬全ての情報を把握出来ているということは、まずないと思います。
その犬の評価がクリアといえる程度だったとしても、各犬種の好発疾病の遺伝的要素というのは、その犬種である以上、おそらく、そう遠くない血縁のどこかにはあるのではないか、と理解する方が、むしろ、考え方としては正しい解釈だと思います。
もちろん、数代の近縁の全ての犬がクリアということもあるかもしれませんが、現実は未知なのです。
たまたま直系の犬(その犬の父母、祖父母、曾祖父母等)全てがクリアといえる程度だったとしても、その遺伝子を持つキャリアであるかもしれませんし、その同胎犬達は発症している犬ばかり、という場合も有り得るわけです。
そもそも、直系の先祖を遡って見た場合に、重度のCHDの犬がいないというのは、当然といえば当然のことだともいえますので、その犬の判断付けとして先祖の検査結果を遡って見ることはナンセンスだともいえます。
CHDの検査結果を、繁殖に用いるにあたってのお墨付きのように言う人もいるようですが、CHDの検査というのは、あくまでもその犬の股関節の緩みどの程度か、というのを評価する検査なのであって、その犬のスコアが良かったからといって、その犬の子にCHDの犬が生まれてこないというお墨付きではありませんし、安心だというお墨付きでもないのです。先にも書いたように、CHDの検査というのは、その犬の現状(関節の状態)を評価するものであって、その犬の遺伝子の検査ではありません。
実際、正常といえる犬からもCHDの子が生まれてくるからこそ、わざわざ各個体の検査をし、少しでも発生のリスクを軽減させる努力をするわけです。
疾病に限らず、遺伝的な要素というのは、確実に子孫に受け継がれるとは限らない、その遺伝子は受けついでいてもそれが表現されるとは限らない(CHDのような遺伝的疾患でいえば、これがキャリアに相当します。)もので、伝染病のような感染の仕組みとは、全く異なる性質のものです。
もし、直系の先祖には異常な犬がいないから子孫も大丈夫、というのであれば、先祖の検査が済んでいればそれでよいということになり、子孫の検査の必要なんかないですし、同じ両親から生まれた同胎犬も検査不要ということになりますし、CHDに限らず、検査可能な遺伝的疾患のリスクは限りなく0になっているはずですが、生き物の遺伝子というのは、そんな単純なものではないのです。
なぜ、それぞれの代で、各個体をわざわざ検査しているのかを考えれば、解ることだと思います。
CHDのような遺伝的疾患というのは、感染症のような性質のものとは異なり、親が評価が良くても、子へのリスクが0ということはないのです。
検査で子孫の健全性まで保証出来るならば、それは飼育者のみならず、繁殖者にとっても非常に都合が良いことで、私も安直に「先祖も親も検査済みですからこの子も大丈夫ですよ」と言って繁殖犬を譲ることが出来たら、どんなに簡単で楽観出来るかと思いますが、もしそんなことを言うとすれば嘘になりますし、正しい知識をお持ちの方からは、繁殖者としての知識を疑われることになると思います。
リスクを軽減する為の努力は出来ても、リスクを0にするのは、少なくとも現代においては、生き物には不可能です。
CHDにしても、BC等の他の遺伝的疾患にしても、「先祖はクリアだから大丈夫」とか、「うちの系統からは出たことがないから大丈夫」とか安易に言えるものではなく、生き物の遺伝子というのは複雑で、そう簡単に大丈夫なんていえるものではないのです。
CHDのような遺伝的疾患の検査結果というのは、あくまでもその個体に限定したものなのであって、子孫の健全性まで約束するものではありません。
ある犬の判断材料として、直系の先祖の検査結果を遡って見ることも、ナンセンスともいえるのです。
このような検査は、ただ単に、子や子孫への発生率というリスクを軽減するための努力として、行われるものなのです。
そのリスクを限りなく0に近づける為の努力なのですが、しかし、0になるというものではないのです。
それから、CHDというのは、要は関節の緩みの程度なわけですが、犬の動きを見て異常だと判るようなのは、程度が酷い場合位なのであって、ただの目視では程度の判断がつかない性質のものだからこそ、その評価方法にはわざわざX線写真が採用されているわけです。
なぜ、評価の良い犬の子孫であっても、わざわざ各個体を、X線写真を用いて検査するのか、CHDに限らず、遺伝的疾患について、科学的に、論理的に、理解していただきたく思います。
尚、ここで書いた遺伝的疾患については、一般的にボクサー犬にみられるとされる遺伝的疾患について書いたものです。
他犬種で問題となっている遺伝的疾病は、CL等、ここで書いたものとは少々性質の異なるものもあります。
ちなみに、近年、国内にJAHDというCHDの検査機関が設立され、その結果が血統書に記載出来るようになったからでしょうか、CHDの検査をするボクサー犬も増えてきましたが、ボクサー犬における遺伝的疾患はCHDだけではなく、心臓や、肘関節、甲状腺機能不全や、その他、悪性腫瘍も含まれます。
心臓は、ボクサー心筋症(ボクサー心臓)と名前がついている程なのですが、CHDの検査の話題に比べ、心臓の検査についてはほとんど耳にすることがないというのは、とても不思議に感じます。
改めて、解りやすい説明が出来ればと思いますし、一繁殖者として、科学的な正しい話をする必要があると思っていますが、とりあえず、こちらで説明します。
まず、遺伝的疾患というのは、感染症とはその仕組みが違います。
どうも感染症のように、安易な解釈をされている方が多いように思いますので、JAHD設立以来、多くなってきたCHD(股関節形成不全)の検査を例に、説明します。
繁殖に用いようとしている犬のCHDの検査をし、その結果、その犬にはCHDの兆候が見られなかったからといって、その犬での繁殖、あるいは、その犬の系統が安心だと言ってしまうとすれば、あまりにも安直です。もしそう言うとすれば、まるで何かの感染症と同じような仕組みだと、誤った解釈をしていると思います。
CHDのような遺伝的疾患の仕組みというのは、母子感染やその他の感染症のように、親が大丈夫なら子も平気というような単純なものではなく、その検査というのも、あくまでもその犬に限定した、その犬の関節の状態がどの程度かという評価なのであって、DNAの遺伝子レベルの検査ではありませんので、子孫や血縁の犬達の健全性を示すものではないのです。
また、血統書に記載されているのは、直系の先祖だけですが、犬は一胎同時に複数生まれてきますので、各直系の先祖には、血統書に記載されていない同胎犬達がいます。直系の先祖と近縁の数頭の情報を把握していたとしても、先祖の同胎犬全ての情報を把握出来ているということは、まずないと思います。
その犬の評価がクリアといえる程度だったとしても、各犬種の好発疾病の遺伝的要素というのは、その犬種である以上、おそらく、そう遠くない血縁のどこかにはあるのではないか、と理解する方が、むしろ、考え方としては正しい解釈だと思います。
もちろん、数代の近縁の全ての犬がクリアということもあるかもしれませんが、現実は未知なのです。
たまたま直系の犬(その犬の父母、祖父母、曾祖父母等)全てがクリアといえる程度だったとしても、その遺伝子を持つキャリアであるかもしれませんし、その同胎犬達は発症している犬ばかり、という場合も有り得るわけです。
そもそも、直系の先祖を遡って見た場合に、重度のCHDの犬がいないというのは、当然といえば当然のことだともいえますので、その犬の判断付けとして先祖の検査結果を遡って見ることはナンセンスだともいえます。
CHDの検査結果を、繁殖に用いるにあたってのお墨付きのように言う人もいるようですが、CHDの検査というのは、あくまでもその犬の股関節の緩みどの程度か、というのを評価する検査なのであって、その犬のスコアが良かったからといって、その犬の子にCHDの犬が生まれてこないというお墨付きではありませんし、安心だというお墨付きでもないのです。先にも書いたように、CHDの検査というのは、その犬の現状(関節の状態)を評価するものであって、その犬の遺伝子の検査ではありません。
実際、正常といえる犬からもCHDの子が生まれてくるからこそ、わざわざ各個体の検査をし、少しでも発生のリスクを軽減させる努力をするわけです。
疾病に限らず、遺伝的な要素というのは、確実に子孫に受け継がれるとは限らない、その遺伝子は受けついでいてもそれが表現されるとは限らない(CHDのような遺伝的疾患でいえば、これがキャリアに相当します。)もので、伝染病のような感染の仕組みとは、全く異なる性質のものです。
もし、直系の先祖には異常な犬がいないから子孫も大丈夫、というのであれば、先祖の検査が済んでいればそれでよいということになり、子孫の検査の必要なんかないですし、同じ両親から生まれた同胎犬も検査不要ということになりますし、CHDに限らず、検査可能な遺伝的疾患のリスクは限りなく0になっているはずですが、生き物の遺伝子というのは、そんな単純なものではないのです。
なぜ、それぞれの代で、各個体をわざわざ検査しているのかを考えれば、解ることだと思います。
CHDのような遺伝的疾患というのは、感染症のような性質のものとは異なり、親が評価が良くても、子へのリスクが0ということはないのです。
検査で子孫の健全性まで保証出来るならば、それは飼育者のみならず、繁殖者にとっても非常に都合が良いことで、私も安直に「先祖も親も検査済みですからこの子も大丈夫ですよ」と言って繁殖犬を譲ることが出来たら、どんなに簡単で楽観出来るかと思いますが、もしそんなことを言うとすれば嘘になりますし、正しい知識をお持ちの方からは、繁殖者としての知識を疑われることになると思います。
リスクを軽減する為の努力は出来ても、リスクを0にするのは、少なくとも現代においては、生き物には不可能です。
CHDにしても、BC等の他の遺伝的疾患にしても、「先祖はクリアだから大丈夫」とか、「うちの系統からは出たことがないから大丈夫」とか安易に言えるものではなく、生き物の遺伝子というのは複雑で、そう簡単に大丈夫なんていえるものではないのです。
CHDのような遺伝的疾患の検査結果というのは、あくまでもその個体に限定したものなのであって、子孫の健全性まで約束するものではありません。
ある犬の判断材料として、直系の先祖の検査結果を遡って見ることも、ナンセンスともいえるのです。
このような検査は、ただ単に、子や子孫への発生率というリスクを軽減するための努力として、行われるものなのです。
そのリスクを限りなく0に近づける為の努力なのですが、しかし、0になるというものではないのです。
それから、CHDというのは、要は関節の緩みの程度なわけですが、犬の動きを見て異常だと判るようなのは、程度が酷い場合位なのであって、ただの目視では程度の判断がつかない性質のものだからこそ、その評価方法にはわざわざX線写真が採用されているわけです。
なぜ、評価の良い犬の子孫であっても、わざわざ各個体を、X線写真を用いて検査するのか、CHDに限らず、遺伝的疾患について、科学的に、論理的に、理解していただきたく思います。
尚、ここで書いた遺伝的疾患については、一般的にボクサー犬にみられるとされる遺伝的疾患について書いたものです。
他犬種で問題となっている遺伝的疾病は、CL等、ここで書いたものとは少々性質の異なるものもあります。
ちなみに、近年、国内にJAHDというCHDの検査機関が設立され、その結果が血統書に記載出来るようになったからでしょうか、CHDの検査をするボクサー犬も増えてきましたが、ボクサー犬における遺伝的疾患はCHDだけではなく、心臓や、肘関節、甲状腺機能不全や、その他、悪性腫瘍も含まれます。
心臓は、ボクサー心筋症(ボクサー心臓)と名前がついている程なのですが、CHDの検査の話題に比べ、心臓の検査についてはほとんど耳にすることがないというのは、とても不思議に感じます。






